外国人を雇用する企業が注意すべきことは?

外国人の心のケアも必須
日本に住む
外国人が感じる
5つの不安とは
1. 外国人材が直面する生活上のトラブル
株式会社パーソル総合研究所が実施した意識調査によると、外国人が日本での生活の中で感じているトラブルには、さまざまな種類があることが明らかになりました。
たとえば、「社会保障制度や年金制度が分かりにくい」、「地域社会とのつながりが持てない」、「老後の生活への不安」などが主な悩みとして挙げられています。
その他にも、外国人が相談できる窓口の少なさ、差別や偏見、日本特有のマナーへの戸惑いなど、多くの場面で生活のしづらさを感じているようです。
多様性は現代ビジネスの重要なキーワードの一つですが、国や文化の違いによる不安や戸惑いは避けられません。外国人が働く職場では、それらに対する配慮が求められます。
次章では、コミュニケーション、文化、労働観、医療、災害という5つの観点から詳しく見ていきます。
2. コミュニケーション
仕事だけでなく、日常生活においてもコミュニケーションは不可欠です。母国語ではない言語を使ってやり取りをしている外国人にとって、意思疎通が難しくなる場面は多くあります。
よくある例として、日本語の「すみません」の使い方に戸惑う外国人がいます。この言葉は場面によって「感謝」や「謝罪」の意味を持ちますが、欧米の文化では「謝罪」は非を認める行為であり、むやみに使うべきではないという考え方があります。
また、日本は「空気を読む」高コンテクスト文化である一方、欧米は言語による明確な伝達を重視する低コンテクスト文化です。このような違いは、意思の誤解や伝達ミスにつながることがあります。
日本語でのやり取りに慣れている場合は、「それは難しいです」という表現から相手の「NO」の意思を汲み取ることができますが、慣れていない場合は「できません」とはっきり伝えないと、意図が伝わらないことがあります。
日本特有の「ほのめかし」文化を理解し、お互いに歩み寄る姿勢が重要です。
3. 文化
日本と外国では価値観に違いがあります。以下のような点がその例です。
- 「お客様は神様」
日本の接客業では「お客様は神様」という考え方が根付いていますが、海外では必ずしもそうではありません。外国人を接客業に採用する場合は、この価値観について認識を共有する必要があります。 - 仕事とプライベートの混同
日本では、仕事の後に同僚と飲みに行く文化があり、これによって職場の一体感を高めるとされています。しかし、海外では仕事と私生活をはっきり分ける文化が主流であり、飲み会への参加を強制すべきではありません。 - 印鑑文化
日本では今でも印鑑を多く使用しますが、欧米では署名が一般的です。最近ではペーパーレス化や在宅勤務の影響で、印鑑の在り方も見直されつつあります。
4. 労働観
欧米の企業は「ジョブ型雇用」を採用し、成果主義であるのに対し、日本企業は「メンバーシップ型雇用」が主流で、年齢や協調性、会社への貢献なども評価の対象となります。
そのため、外国人にとっては「給料が上がらない」「昇進が遅い」「給料が安い」といった不満が生まれやすい傾向にあります。
こうした違いを理解し、外国人と一緒に働く場合には、仕事の進め方や役割について明確に話し合い、共通認識を持つことが大切です。
ただし、近年ではジョブ型雇用を取り入れる企業も増えており、日本企業の雇用形態も変わりつつあります。
5. 医療
外国人の中には、日本の医療機関を利用する際に不安を感じている人も少なくありません。受付や医師に自分の症状をうまく伝えられないというコミュニケーションの問題、また医療の仕組みや支払い方法が分かりにくいことが主な原因です。
実際に行われた調査でも、「病気やケガをしたときの対応」に困った経験がある外国人は18.6%に上ります。
企業としては、緊急時の対応についてあらかじめ研修などを通じて共有しておくと良いでしょう。
6. 災害
日本は地震大国であり、地震に慣れていない外国人にとっては、その存在自体が恐怖となります。さらに、災害情報や避難指示などが多言語対応されていないケースもあり、外国人が災害時にどう行動すべきか分からない場合もあります。
一般財団法人ダイバーシティ研究所の資料によると、災害対応では「ストック情報(事前知識)」と「フロー情報(災害発生時の情報)」の両方が重要とされています。
このような情報が不足していると、災害時に不適切な対応をしてしまう可能性があります。企業は、災害に備えてストック情報を事前に共有し、フロー情報の収集方法についても指導しておくことが重要です。